離婚を考える際、子どもがいるご夫婦にとってとても重要なのが「養育費」の取り決めです。
養育費は、親の義務であり、子どもの健やかな成長のために必要なものです。しかし、現実には支払いが滞ったり、そもそもきちんと決められていなかったりするケースも少なくありません。
この記事では、養育費の正しい取り決め方と、離婚協議書・公正証書に記載する際の注意点を行政書士の視点から解説します。
養育費とは?その目的と重要性
養育費とは、離婚後に子どもと同居していない側(通常は非監護親)が、子どもを育てるために支払う費用です。
具体的には、以下のような費用が含まれます
- 食費・衣服費・医療費などの生活費
- 教育費(保育園、学校、塾、習い事など)
- その他、住居費や交通費など子どもに関わる全般的な費用
養育費の支払いは親の義務であり、子どもにとっての「当然の権利」です。金額や支払い期間をきちんと定めておくことで、将来のトラブルを防ぐことができます。
養育費の取り決め方法
① 話し合いによる取り決め(協議)
もっとも一般的なのが、両者の話し合いによって金額・支払方法を決める「協議」です。
お互いの収入や子どもの年齢・生活費をもとに決めますが、基準がわからないという方は、以下の「算定表」を参考にするとよいでしょう。
養育費算定表(裁判所の標準)
家庭裁判所が利用している養育費の目安表。
両親の年収や子どもの年齢・人数に応じて、おおよその金額を確認できます。
② 家庭裁判所での調停や審判
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることも可能です。
ただし、時間がかかるため、まずは協議による取り決めを目指すのが一般的です。
書き方の注意点(離婚協議書・公正証書への記載)
養育費の取り決めは、口約束ではなく必ず書面に残すことが大切です。将来、支払いが滞ったときにも法的に対応しやすくなります。
書く際の注意点は以下のとおりです。
① 金額・支払日・振込口座を明確に
- 月額〇万円
- 毎月〇日までに
- ○○銀行○○支店 普通口座 〇〇〇〇〇〇(受取人:氏名)
など、曖昧な表現は避けて具体的に記載しましょう。
② 支払期間を明記する
「〇〇年〇月から、子どもが満20歳になる年度の3月まで」など、終了時期を明確にします。
※高校卒業(18歳)までか、大学卒業相当(22歳)までかは家庭によって異なります。
③ 増額・減額の条件に言及する
- 相手が失業した場合
- 子どもが進学した場合
- 受け取る側が再婚した場合
など、将来的な見直しの可能性を明記しておくと、後の話し合いがスムーズです。
④ 支払いが滞った場合の対応
「支払いが1回でも遅れた場合は、残額全額を一括で支払う」
「支払いがない場合、強制執行を行うことができる」
など、万が一に備えた記載をしておくと安心です。
公正証書にしておくとさらに安心
養育費の支払いについては、「公正証書」にしておくことで、支払いが滞った際に強制執行(給料や財産の差押え)が可能になります。
これは、通常の協議書(私文書)ではできない大きなメリットです。
「強制執行認諾文言」を入れて作成することで、裁判を起こさずに回収手続きができるため、特に長期にわたる支払いがある場合は公正証書が有効です。
よくあるトラブルと防止策
- 取り決めをしていなかった → 将来の請求が困難に
- 口約束だけで終わった → 証拠がなく、請求できない可能性も
- 支払いが滞っているが対応できない → 公正証書がないと法的措置に時間がかかる
こうしたトラブルを防ぐためには、専門家に相談しながら、正しい形式で書面化することが重要です。
まとめ:養育費は「子どものため」の約束
養育費は元夫婦の間だけでなく、子どもの将来に関わる大切なお金です。
金額だけでなく、支払い方法や見直し条件まで丁寧に取り決めておくことで、離婚後も安心して子育てに集中することができます。
もし取り決めに不安がある場合は、行政書士や弁護士などの専門家に相談して、きちんとした書面(離婚協議書・公正証書)を作成しましょう。